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ほけきょ庵の焼き物アレコレ

オリジナルブレンド土

せっかく伊豆に来たのだから「伊豆の陶芸」を体験してほしい。

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備前や笠間や信楽などで、陶芸体験してみたけど

 

どこの工房で体験しても焼き上がりが一緒だなあ。
選べる釉薬(色)はどこも「緑」「黄色」「白」「茶色」「黒」とかだよね。

と、疑問を持たれた事がございますか。

本来、産業としての焼き物作りは、土の産地において行われてました。
信楽も備前も瀬戸も常滑も、すべての窯業産地は良質の土に恵まれた土地です。

近代以降流通が発達し、国全体が裕福になった今の日本では
どこに住んでいようと、たいていの物が手に入ります。

そんな訳で焼き物屋も「土の産地」から開放されて
気に入った土地で思い思いに焼き物作りを行うことが可能となりました。

その反面、陶芸の均一化が進んでしまったのです。

伊豆に住んでても東京に住んでても日本のどこに住んでても「信楽」の土が手に入るし
緑や黄色の釉薬が手に入る。

便利になった反面、特色が消え、どこも一緒になってしまった次第です。

せっかく伊豆に遊びに来たのに他所の陶芸体験と一緒。
どこで体験しても一緒。日本全国どこの陶芸教室に行っても
使う土はほとんど同じで釉もほとんど一緒。

私はそんな素朴な疑問を心の中に抱いてました。

もちろん、「そこで取れた土を焼く陶芸」も健在ですし、
単に購入した「どこそこの土」に「売ってる釉」をかけて焼けばインスタントに陶芸も楽しめます。
素晴らしい「風合い」が得られるのであれば「技法は問わない」のが陶芸の奥深さです。

「でもやっぱりそんなのツマラナイ」

せっかく伊豆に来たのだから「伊豆の陶芸」を体験してほしい。

陶芸にたずさわる者、伊豆に住む者として、伊東温泉の観光施設を営む者として、
単純にそう思うのです。

■良く混ざるとこのマーブルが消えます。
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陶芸の均一化が進む一方で、それに抗う工房も存在します。

売ってる土をそのまま用いるような真似はせず
様々な産地の土が手に入る利便性を逆に活かして
土のオリジナルブレンドを産み出す事に「価値観」を見出したのです。

土の特性として主だったものを以下に挙げてみます。

・鉄分が多い
・鉄分が少ない
・可塑性が高い
・粘り気が多い
・滑らか
・ざっくりパサパサしてる
・長石の粒が多くゴツゴツしてる
・赤い
・白い
・黄色い
・低温焼成向き
・高温焼成向き
・急冷が可能

たいていの土がこれらの特徴を数個併せ持ってます。
そしてそれらを混ぜて新しい「風合い」を作りだす。

長石の多い「古信楽の土」と、鉄分の多い「備前の土」を混ぜて
ゴツゴツして赤茶けた風合いを・・ですとか。

ざっくり白い「もぐさ土」とすべらかな「五斗蒔土」をまぜて
温かみのある白い焼き物を・・・そこにさらに、住んでる土地の土を加えたりですとか。

更には「炭酸カルシウム」「ドロマイト」「ベントナイト」などの土石類や触媒材
「 二酸化マンガン」「第二酸化鉄」「クロマイト」などの酸化金属などを用いる。

その気さえあれば「アルケミスト」的なアプローチも可能となり
「よりパーソナルな土作り」が試せる時代となったのです。

新しい自分だけの土、釉、焼き方を創出するのが現代陶芸の仕事となり
日々新しい風合いが創出されはじめてます。


■少量づつブレンドすると良く混ざります。

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ほけきょ庵の陶芸体験作品と販売品の殆どは「ブレンド」されたオリジナルの土です。

伊豆の地層からとれる「土」のみでは安定供給が望めないので
様々な産地の土をブレンドし、伊豆の土を混ぜ、
ケミカルな知識プラス経験から生まれてくる「勘」を持って日々土作りに励んでいます。

幸いな事に、陶芸体験の皆様のおかげで
窯を炊く回数は月に数十回。間断なく焼成ができ
焼成テストがどんどん進むのはこの上ない強みです。
進化してゆくスピードが衰えることがありません。

備前でもない信楽でもない、常滑でも伊賀でもない。
どこにも売ってない「ほけきょ庵の土」に「オリジナルの釉薬」をかけて
「独自の焼成技法」で焼き上げてます。

ぜひ、この機会にほけきょ庵でしか得られない、「伊豆ならでは」の
「風合い」をお楽しみください。

文章※ほけきょ庵マスター 武山よしてつ