ブログ

スタッフの作品

花器 ティラノサウルス

 花器 ティラノサウルス

2007年6月頃製作 制作者 武山よしてつ
材料 信楽並土 金彩釉 鉄赤釉
製作時間 約50時間(焼成時間除く)

私達は3億年に及ぶ生物学的な種としての寿命を獲得出来るのでしょうか。

 

image000053.jpg

約6000万年前、中央アメリカのユカタン半島に巨大隕石が落下する、それ以前の約3億年にわたり栄えた恐竜と呼ばれる巨大生物。現代の野生動物を遥かに凌駕するであろう剥き出しの野生と凶暴さと巨大さ、今では石と化した骨しか残っていません。実際に存在したのだけど、現存在は誰も見たことも無く、作者の頭の中でひととき描いた想像上の生物として観て頂ければ、よりこの作品に近づけるかと思います。学術的にもキチンと分類され整理されているのだけど、映画の中で見るゴジラなどの怪獣くらい現実(今現在の常識)離れした存在だと作り終えたいま感じています。

人の目から見ればこのグロテスクで原始的な生物は、三億年にわたり生き栄えました。私達人類は「理性」という名の武器を携え、そんな彼らを下等でグロテスクな生き物と卑下します。「恐竜的進化を遂げる」などという表現も大概が卑下するときに用います。しかし、三億年にわたり栄えた事実、これは地球の寵愛を受けていたのだと考えられないでしょうか。

製作中に一番感じたことは、物事の見方は相対的な物であり、私達人間の持つ主観、人間主義的な物の見方は、グローバルでマクロな時間の流れの中では通用しないであろうこと、人類の歴史は数十万年を数えるほどでしかあらず、たった数万年しか熟成されていない人類の最大の武器であるはずの「文明」「前頭葉」「理性」などは、この凄まじい造形(存在)の前では砕かれてしまうであろう、という事でした。

恐竜のミニュチュアを作ったくらいでそう感じてしまうのですから実際に目の前にしたらどの様に感じてしまうのか・・、ただただ、その圧倒的で凄まじい存在に身震いしてしまうのであろうかと、想像力がかきたてられます。この作品は私なりの畏敬と尊敬の念をこめ、しかし想像及ばないであろう凶暴で凶悪で美しい強烈な「野生」を陶芸の技法を持って表現してみました。

この造形、貴方の目にはどのように映りますでしょうか。
グロテスクで気持ち悪いですか?畏怖の念を感じるほど美しいですか?

ほけきょ庵にてお確かめ下さい。